けれどその原点は、小学生の頃に遡る。それは、学校から訪問した老人ホームでのこと。彩花たち児童が老人に話しかけると、みんな満面の笑みで応えてくれた。彩花自身が嬉しくなる、そんな心からの笑顔だった。けれど話しかけるだけでそれ以上に喜ばせる術がないもどかしさも感じた。ふと、老人に寄り添う職員に目が留まる。移動、食事、お手洗い……職員は老人の生活を支えていた。「この人は、今日、私が感じた喜びより、もっとすごい喜びを感じているんだろうな」。人を支えることで得られるやりがいを、幼いながらに想像したのだった。就活に行き詰まり始めた彩花にとって、ゼミの小笠原先生は会うと不思議と安心する、お守りのような存在だった。