学園祭では「ウェディングドレスショー」と題し、ゼミ生全員が自作のドレスを着てステージに上がった。その華やかさに、観客からため息と歓声が沸き起こる。苦労した分、どのドレスも一際輝いて見えた。被服の実習は完成したときの達成感がたまらない。この楽しさを中学生にも教えてあげたいと思う。彰華は、春から兵庫県の公立中学校で働くことが決まっていた。念願の家庭科教員になるのだ。料理と裁縫が得意な母の影響を受け、彰華は幼い頃から家庭科の授業が大好きだった。けれど、彰華が学んだ中学校は過疎の町にあり、生徒数が少なく、先生の数も少なかった。彰華が中1のときは家庭科を専門とする先生がいたが、2年生になると他校へ転勤してしまい、代わりに音楽の先生が家庭科も教えるという状態だった。教科書をなぞるだけの授業。